好きこそ、最強の才能だ。脊髄の病気・アメリカ手術・30歳美大卒業——「好き」だけを頼りに生きてきた男の話。
生まれつきの脊髄の病気で高校は3分の1しか通えず、10代後半から20代前半はアメリカで手術と療養。30歳で美大を卒業してソフトバンクへ。才能とは「好きかどうか」のことだと言い切る人の話。
死ぬ瞬間に後悔しない方を選ぶ。それだけを基準にしてきた。
独立の決断・成功論
聞き手(渋谷 彩華):起業して後悔した夜はありますか?
ないですね。大事にしていることが一つあって、死ぬ瞬間に「この人生でよかったな」と思って死にたいというのがあるんです。
起業しなかった自分と起業した自分、どちらが死ぬ瞬間に後悔するかなと考えた時に、たとえ失敗しても起業した方が後悔しないと思ったので。だから後悔はないです。

聞き手(渋谷 彩華):メンタルが一番やられた時、どうやって乗り切りましたか?
一番しんどかったのは高校生の頃ですね。
生まれつき脊髄の病気があって、成長とともに下半身が麻痺していく症状で、高校は3分の1しか行けなかった。思春期と重なって、家でも当たったりして、ものすごく落ち込んでいました。
誰かが助けてくれたかというと、正直誰もいなかった。でも20歳ごろに、周りの友達がいろいろ話を聞いてくれるようになって、それで救われた感じです。
母は、営業先を回りながら息子を治せる先生を探していて、それがきっかけでアメリカで手術を受けることになりました。
「母が営業先を回りながら、息子を治せる先生を探した」——仕事中も、ずっと子どものことを考えている。
働くお母さんは、頭の中にいつも家族がいる。それがどれほど大きな力になるか、春日さんのエピソードが教えてくれました。
聞き手(渋谷 彩華):成功する人の共通点と、うまくいかない人の特徴は?
成功する人は、やる人ですね。何かしら行動に移せる人。
動いてみないと成功のきっかけはつかめない。逆にうまくいかない人は、いろいろネガティブに考えすぎて動けない人かなと思います。
聞き手(渋谷 彩華):成功に必要なのは努力・才能・学歴・運、どれですか?
才能ですね。
ただ、私が言う才能というのは、飛び抜けた能力のことじゃなくて「好きかどうか」という意味での才能です。好きな人は寝ないでそれができる。好きじゃない人は普通にしかなれない。
好きなことのために大変なことをしているわけだから、全てがプラスになる。そういう意味で、好きという才能が一番大事だと思っています。
才能とは、好きかどうか。 好きな人は、寝ないでそれができる。

ネガティブだった頃の自分が、ポジティブに変わっていく姿を、妻は横で見ていた。
夫婦・家庭
聞き手(渋谷 彩華):起業についてパートナーから反対されたことはありますか?
ないですね。理由は2つあって、妻自身も本業をしながら自宅で料理教室をしたり、発酵食品の資格を取ったり、もともとそういう価値観の人だったこと。
もう一つは、サラリーマン時代に会社の評価や昇進でネガティブになっていた自分の姿を、ずっと横で見ていた妻が、副業で会社を作り始めてからポジティブに変わっていく姿も見てくれていたんです。だから1ミリも反対されませんでした。
聞き手(渋谷 彩華):仕事の愚痴はパートナーに話せますか?
すごく話しますよ。仕事とプライベートを全く切り分けていないので、今日のお昼ここで美味しいご飯食べたよ、ぐらいの感覚で話しています。
一番身近にいる人に話せる関係は、やっぱり大事だと思います。

聞き手(渋谷 彩華):ご自宅でのヒエラルキーは何位ですか?
1位です。ただ、隠れ1位は多分猫ですね。
みんなのメンタルを支えているというか、家の裏のボスです(笑)ちゃんとお迎えも来てくれますし、空気も読みますし。
聞き手(渋谷 彩華):守るものがある人の方が、経営者として成功すると思いますか?
思います。ただ、うちは少し特殊で、子供が2人いるんですが上が30歳・下が27歳なんですよ。
妻の連れ子で、結婚した時にはすでに大人でした。だから食べ物を与えるとか習い事のお迎えとか、そういうレベルの子育てではなくて、自分の生き様を見せることが一番の教育になる。
反面教師にはなりたくない。こういう生き方もあるんだと、少しでもプラスに働くような背中を見せたいという意味で、家庭を持つことは大きなプラスだと思っています。
「すでに大人の子供に、生き様を見せる」——子育ては小さいうちだけじゃない。
大人になった子どもに「こういう生き方もある」と見せ続けることも、立派な親の仕事なのかもしれません。
家に帰ってテレビをつけたら、母が映っていた。
母のこと・生い立ち
聞き手(渋谷 彩華):お母様はどんな性格でしたか?
自分大好き、ものすごく優秀なビジネスマン、そして太陽みたいに明るい人ですね。その場にいるだけで空気が変わる。
ソフトバンクで伝説の店長と言われていた人で、一番大きい店の店長を務めていました。一緒に働く人にファンがたくさんいて、会社の偉い人にも名前を知られているような存在でした。
聞き手(渋谷 彩華):働いていた姿と家にいた姿、どちらの印象が強いですか?
働いている姿ですね。たまたまソフトバンクに私も入社して、職場での母の姿を見たり、母の部下と交流する機会があって。
家でテレビをつけたら母がニュースやドキュメンタリーで映っていたこともよくありました。
一方で、家にいる母のことは大嫌いでした。朝早く出て夜遅く帰ってくる、家事は全部母がやっていたけど話す時間がない、悩みも聞いてもらえない。社会人になったら絶対縁を切ってやると思っていたぐらい。
でも同じ会社に入って働く姿を見て、ビジネスマンとしてこんなにすごい人なんだと初めてわかったんですよ。

聞き手(渋谷 彩華):幼少期はどんな子どもでしたか?
引っ込み思案で、人の目ばかり気にしている繊細な子供でしたね。その反動で自分のペースを意識して守ることが自然と癖になっていた気がします。
それが今のビジネスにつながっているのかというと、「自分は自分でいい」という軸の持ち方だと思っています。飲み会も好きじゃないし、群れてキャンプにも行かない。でもそれでいい、無理に合わせなくていいという感覚が、経営者として自分らしいやり方を貫くことへの土台になっている気がしています。
ただ、年を重ねると「自分はこれしかできない」と頑固になって老害になる危険もある。それだけは気をつけながら、人の役に立てるよう学び続けたいと思っています。

好きなことしてれば、いいんじゃない。20代の自分にも、母にも、同じことを言う。
20代の自分へ・母へ
聞き手(渋谷 彩華):20代の自分にアドバイスするとしたら?
10代後半から20代前半はアメリカで手術・療養していて、社会と関係を持っていなかった時期でした。美大の予備校に通い始めたのが20代後半で、30歳で卒業という人生です。
その自分に言えるとしたら、好きなことしてればいいんじゃない、ですね。
日本大学芸術学部という美術系の経歴は、東大や早慶が多いソフトバンクや大手金融機関の中でむしろ目立って、マーケティング部署に配属されたり、デジタルマーケティングの仕事につながっています。
普通の大学に行っていたら絶対になれていなかった。好きなことをやってきた結果が、今ここにある。
聞き手(渋谷 彩華):お母様へ今伝えたいことは?
死ぬまで好きなことやっててね、ですね。
ちょうど70歳になったばかりで、今も訪日インド人のガイドとして全国を回るような活動を続けています。
今も好きなことができているお母さんに、これからもずっとそうしていてほしい。

取材を終えて
「好き」という言葉が、このインタビューに何度出てきたか数えきれません。才能の定義も、20代へのアドバイスも、母へのメッセージも、全部「好き」に帰着しました。
脊髄の病気、アメリカでの手術、30歳での美大卒業、そして大嫌いだった母との同じ職場。どのエピソードも、ひとつの「好き」が次の扉を開いていました。
「好きこそものの上手なれ」という言葉を、春日さんは自分の人生で証明していました。それだけで、十分すぎるほど強いと思います。
取材先
| 所在地 | 神奈川県横浜市磯子区 |
|---|---|
| 事業 | Webマーケティングのコンサルティング、ユニバーサルデザインのコンサルティングとリサーチ、企業研修・セミナー。 |
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